
今回ご相談をいただいたのは、大阪府池田市石橋エリアにある築40年以上の木造アパートでした。昭和後期に建築された2階建ての木造アパートで、長年にわたり安定した家賃収入をもたらしてきた、オーナー様にとって大切な資産でした。
しかし、築年数の経過とともに状況は少しずつ変わっていきました。屋根や外壁の劣化、給排水設備の老朽化、空室期間の長期化、家賃相場の下落——維持管理にかかる費用と手間は増える一方で、収益性は年々低下していました。さらに、入居者の高齢化も進んでいました。中には20年以上住み続けている方もおられ、家賃は入居当時の水準のまま据え置かれていました。
オーナー様ご自身も高齢となり、修繕の判断や管理業務が体力的・精神的に大きな負担になっていました。「このまま修繕費をかけ続けるべきか」「建て替えるべきか」「いっそ売却した方がいいのか」——判断に迷われた末、「まずは相談だけでも」とご連絡をいただいたのがきっかけでした。
本件の最大の課題は、「入居者がいる状態での売却をどう進めるか」でした。そのままオーナーチェンジで売るのか、全室明け渡し後に売るのか、建物を解体して土地として売るのか——それぞれに異なるメリット・デメリット・リスクがあり、表面的な判断では済まない案件でした。
オーナー様は当初、複数の不動産会社にご相談されていました。しかし多くの会社は「高く売れます」「すぐに買い手がつきます」といった表面的な言葉が中心で、具体的な根拠や比較材料が提示されることはほとんどなかったそうです。
弊社では、まず現地調査を徹底的に行いました。建物の状態確認だけでなく、入居者属性・賃料と相場の乖離・修繕履歴・近隣の投資需要・再建築条件を一つひとつ整理したうえで、複数のシナリオを提示しました。「現状オーナーチェンジ売却」「立ち退き交渉後に解体して土地売却」「一部退去後に条件を調整して売却」——それぞれの選択肢に、具体的な数字と想定スケジュールを添えてご説明しました。
オーナー様は「売却を急かされるのではなく、きちんと比較材料を提示してくれたことが決め手だった」とおっしゃっていました。特に、立ち退きに関する法的な説明、費用の目安、想定されるトラブルへの対処方針まで具体的に示したことが、大きな安心感につながったとのことです。
「難しい案件ほど、地域の事情をよく理解している会社に任せたい」——そのようにご判断いただき、最終的に弊社へ正式にご依頼いただきました。地域に根付いた実績と情報力が、信頼の土台となったケースです。
収支シミュレーションを実施した結果、築年数と今後の修繕リスクを踏まえると、将来的に大規模修繕費が高額になる可能性が高いと判断しました。オーナー様は「老朽化したアパートをそのまま次世代に残すのではなく、きちんと整理した状態で引き継ぎたい」と決断されました。方針は「全室立ち退き後、解体して土地として売却」に決定しました。
最も慎重に、そして丁寧に進めたのが入居者対応です。長年住み続けておられる方も多く、突然の退去要請はトラブルの原因になりかねません。まずオーナー様名義で状況を誠実に説明する文書を作成し、その後、各入居者との個別面談を実施しました。
対応において特に重視したのは、十分な猶予期間の確保、引越し費用の補助、近隣物件のご紹介、そして高齢の入居者へのきめ細やかなサポートです。退去をただ「お願いする」のではなく、次の住まいへの移行を支援する姿勢で向き合いました。感情的な対立を生まないよう、常に誠実な態度を貫いた結果、時間はかかりましたが最終的には全入居者の合意を取り付けることができました。
全室明け渡し完了後、建物を解体しました。池田市石橋エリアは阪急沿線に位置する人気の住宅地であり、土地需要は一定数存在します。周辺の新築戸建て相場、建築プランの検討しやすさ、接道状況などを整理し、「戸建用地」として販売を開始。建築会社とも連携し、参考プラン付きでの提案を実施したことで、地元ビルダーとの成約に至りました。
最初は不安しかありませんでした。長く住んでいる入居者の方々との関係を壊してしまうのではないか、立ち退き交渉が難航して裁判沙汰になるのではないか、解体費用や売却価格が想定より大きく下がるのではないか——心配することが次々と浮かびました。
でも、打ち合わせを重ねるうちに、少しずつ不安が薄らいでいきました。一つひとつの局面で丁寧に説明してもらえたので、自分が今どのフェーズにいて、次に何が起きるのかが常に分かる状態でいられました。それが何より心強かったです。
特に印象に残っているのは、『売ることよりも、どう整理するかを一緒に考えてくれた』という感覚です。最終的に、家族に安心して資産を引き継げる形になりました。本当にお願いしてよかったと、心から感じています。
築古アパートの売却は、単なる不動産取引ではありません。入居者対応・法的配慮・税務検討・市場分析——複数の視点から多面的に判断することが求められる、総合的な問題解決の仕事です。焦って進めれば、入居者とのトラブルや価格の下落につながるリスクがあります。重要なのは、「感情面」と「数字」の両方を丁寧に整理しながら進めることです。
今回の事例のように、時間をかけて丁寧に向き合うことで、すべての関係者が納得できる形での円満な資産整理が実現できます。入居者との関係も大切にしながら、オーナー様の将来設計を守る——この両立こそが、弊社が目指す仕事のかたちです。
「老朽化した物件をどうすればいいか分からない」「入居者がいて身動きが取れない」とお感じの方は、ぜひ一度ご相談ください。不動産は建物ではなく、人生の一部です。その背景に丁寧に寄り添いながら、次世代へ安心して引き継げる最適な形をともに探してまいります。